「体感映画」のススメ>石田峰洋さんのレポート

コモンズフェスタ2009/2010「U35の実力」、モニターレポートシリーズ、今回は<「体感映画」のススメ>について、8月の「住み開きアートプロジェクト」にもご参加をいただいた石田峰洋さんに寄せて頂きました。



應典院主催のコモンズフェスタの一企画である「体感映画のススメ」に参加した。ゲストは平岡香純監督。

個人的な感想を一言にすると、「今までにない映画体験をした」、「こんな映画があるんだな」と。あるいは、「こんな風に映画を見たことはなかったかもしれない」。

平岡香純監督は学生時代から映画を撮り始め、数々の作品を制作しており、今回上映された「落書き色町」では調布映画祭2008でグランプリ受賞、世界15ヶ国、40の映画祭での上映など、国内外で大活躍されている。モンモン★トゥナイトというバンドでの音楽活動もしている。

当日の流れは、はじめに監督の紹介(+最新作「プリミ恥部な世界」のダイジェスト版上映)、監督のトーク、映画「落書き色町」の上映、そして参加者との質疑応答と続く。

監督にとっての映画とは、非日常への想像力を喚起するもので、「もっとわくわく、面白く、刺激的」で、自由な映画を求めていて、それは最新作の「プリミ恥部な世界」でのライブやダンスパフォーマンスなどが入り乱れる構成に顕著に現れているようだ。(しかし私は未だに「プリミ恥部な世界」を見ていない!)
印象に残っているのが、「ストーリーは映画の一つの要素にしか過ぎない」、そして観客が主体的に映画から“何か”を感じ取ってくれればよい、という言葉。
普通、映画には解釈がつきもので、それが監督が提示する何らかの「答え」なのか「問い」なのか、あるいはその他の何なのかは分からないが、映画の中の世界背景、キャラクター、人間関係や、それらの変化などといった様々な要素の集合体が物語で、それは映画の本質的なものであると考えていた。映像表現が感覚的なものであるということは信じているが、どうしても映画の中から論理的な部分を抽出して、何らかのテーマについての「問い」なり「答え」なりを探すという見方に慣れてしまっているので、上映前の監督の語りがなければ、間違いなく混乱していたに違いない。あるいは、そのような「答え」を見つけられず違和感を覚えていただろう。そして、これは難解な映画だと、それ以上見ることを放棄していたかもしれない。実際見てどうだったかと言われても、うまく言葉では言い表せないが、どこか哀しく、儚く、しかし台詞や美術、演技などの表現は強烈で、でも総体的にとても美しいと感じた。「言葉にはできないけれど、なんとなく何かを感じた」が許されるということが新鮮だった。
鑑賞後の質疑応答での、参加者が平岡監督の映画の見方として「考える」という言葉を使うことを、その都度「考えるというか、”感じる”」と言い直す平岡監督の姿がとても印象的だった。

イベントでは、「映画とは?」、「映画製作の動機は?」といった本質的な話を実にユニークな体験談などを交えて説明していて、その体験談を聞くだけでもすごく面白い。

5月には九条のシネヌーヴォで最新作である「プリミ恥部な世界」が上映されるという。人に説明しにくい映画なのでとりあえず見て「感じて」ほしいと思います。私は絶対見に行きます。


(左は平岡監督、右は企画者の秋田光軌<築港ARCインターン>、真ん中が石田さん)

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