ブック・アート・ワークショップA~素材を交換して本をつくろう!~

 1月24日(日)、應典院コモンズフェスタ参加事業となる、なにわーとスクールん♪アートに深入りするための四つの講座(4)「ブック・アート・ワークショップA~素材を交換して本をつくろう!~」を開催しました。講師はコスタリカの美術家、ロセラ・マトモロスさん。ロセラさんと参加者21名が、即興的に描いたドローイング(線描画)とそれぞれが持ち寄った素材を交換し、自分だけの本をつくってみるというインタラクティブなワークショップになりました。



 ロセラさんは、いつも即興的にアイデアを思いつく美術家なので、スタッフ達もどんなワークショップになっていくのかドキドキしながら始まりました。まずは参加者の心と身体をほぐすため、瞬発的なドローイングづくりからスタート。「明るい」と「暗い」、「生」と「死」など、ロセラさんが用意した反語からうけるイメージを、20秒の即興で描きます。考えずに感情を吐き出して描くことに、最初は戸惑いながらペンを動かしていた皆さんでしたが、「More intence!(もっと強く!)」というロセラさんの明るいかけ声に後押しされながら、心がだんだん解放され、のびのびとしたドローイングをスピードにのって次々と描いていきました。



 心と身体が解放されてきたところで、出来上がったドローイングの中から、自分の一番気に入ったものを選びます。そしてそれを他の参加者と交換するため、同じ絵を手描きで20枚コピーしていきます。皆さんがさくさくとコピーを仕上げてゆく様子は、ドローイングを反復することで、言葉から受けた瞬間的な感情や直感を反芻しているかのようでした。



 ドローイングをコピーし終わったら、次はそれを全員で交換します。手元に集まった全員のドローイングと言葉を、今度は熟考しながら並べ替え、自分だけのストーリーを編み出していきます。ここでいよいよ皆さんが持ち寄った切り抜きなどの素材が登場!ドローイングで心が解放されたせいか、皆さんうれしそうに他の参加者に話しかけ、素材を交換していました。そしてドローイングとドローイングの間に思い思いの素材が挟み込まれ、貼付けられ、ストーリーがどんどん豊かな色彩を帯びてゆきました。最初はどんな本ができていくのか、誰も予想がつかなかったのですが、ロセラさんに導かれできていく本は、今ここにある直感と巡り合わせをシェアするという哲学的な作品となりました。





 最後は出来上がった作品の発表です。3時間かけて作り上げた本のストーリーはどれも濃密で、それぞれのページにこめたアイデアを、ひとりひとり丁寧に話してくれました。ロセラさんいわく、「同じ言葉とドローイングを共有しながらも、それぞれの世界が展開し、どの本も全く違うことがすばらしい。」とのこと。それぞれの本の世界について皆さんがうれしそうに説明しているのを聞いていると、本は私たちの中にある複雑な世界観を、解きほぐしながらもひとつに統合することができる表現方法なのだと思えました。



 コスタリカという日本ではあまりなじみのない文化背景をもつロセラさん。その文化背景について語らずとも、彼女からにじみ出る言葉や姿勢から、特有の生命観を参加者の皆さんが肌で感じ取っていた様子でした。日々の文脈を離れて言葉の通じない国を旅する時のように、異なる文化背景に感覚的に触れることで、心と身体がおのずと開かれていった3時間。その時間が本という形に凝縮されていったせいか、参加者の皆さんからは、とても充実した時間を過ごせたとの感想をたくさんいただきました。あと、予想外の展開がとても面白かった、自分を解放することができた、とも。ロセラさんの導く世界へみんなでワープしたワークショップ、そのおみやげは世界に一冊しかない本でした。
(文:NPO大阪アーツアポリア ふるさかはるか)


主催:大阪市(現代芸術創造事業)
企画・運営:NPO大阪アーツアポリア、(財)大阪城ホール

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