「10人写楽」の中にいる女性

1月31日(日)は、コモンズフェスタの一環として本堂ホールで行われた、劇創ト社deネクタルグン「10人写楽」の最終日。満員のお客様と共に観劇させていただきました。

このお芝居は、写楽の絵を盗もうと企む窃盗集団(現代)と、喜多川歌麿をはじめとする、版元「蔦屋」に集まった絵師たち(江戸時代)の物語が交互に展開しながら進んでいきます。語り手も含め、総勢11名の役者さんは2つの時代それぞれに対応した役を見事にこなされ(全員が1人2役)、「写楽」という共通のキーワードを巡って、2つの物語は何らかの相関関係にあるということが見る側に暗示されます。
数多くの登場人物がおり、しかも2つ分の物語が存在する複雑な構成となれば、普通なら途中で頭がこんがらがって把握できなくなりそうなものですが、各キャラクターの個性が本当に活かされており、そのようなストレスを感じることなく純粋に楽しんで観ることができました。

驚くのは、そのスピーディな演出です。演劇というのは色々と制約が多い表現形態ではないか、と自分は感じていたのですが、アイデアと役者さんの腕次第でどうとでもなるという事を見せつけられました。
とてもリズミカルで音楽的、または映画的と感じられる瞬間があり、かと思えば、演劇の醍醐味であるだろう役者さんの密なやり取りもありと、たった1つの舞台セット上で多彩なエンターテイメントが繰り広げられていました。

個人的な感想を述べさせてもらえば、作・演出の城田邦生が「キタ/喜多川歌麿」というキャラクターに投影したであろう、女性(あるいは社会)への解釈を少し意外に感じました。集団との関係性を結ぶことは、どちらかというと女性が得意とする分野であり、集団の中で自己実現を追求し葛藤するのは男性に顕著な傾向ではないか、女性はその立ち位置に寄りかからずに生きていけるのではないか、というイメージ・思い込みがあったからです。
しかし、「キタ/喜多川歌麿」が望んだ自己実現が完全に個人の中で完結するのではなく、どちらも仲間ありきで想定されていたことを考えると(それも現代のキタの方がより直接的な形で)、人との繋がりを実感できなくなりがちな日常の中で、女性が「自己実現の形を借りつつ、集団とのより強固な関係性を望む」ということも現実的に考えられるのだろうな、と自分の認識について見直す契機ともなりました。

そういう意味で、異性の観客の意見を是非聞いてみたいな、と強く感じた作品でした。

                         (事務局:秋田光軌)

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