シアトリカル應典院での観劇久しぶり【1/16:満月動物園「太陽物語」のレポート】

シアトリカル應典院での観劇久しぶり

 満月動物園『太陽物語』、演出・脚本/戒田竜治。満月動物園はずっと前に、同じシアトリカル應典院で拝見した。旗揚げ5年以下の演劇祭の一つであったか?と思う。モノローグ集積の内面的でドラマ性はほとんどないような、かなり抽象的で若干自分に酔っているような舞台だったような記憶あり。

 出演は、河上由佳、諏訪いつみ、みず、西原希蓉美、川端優紀、横田江美、松本茜、竜崎だいち、昇竜之助。満月動物園の役者さんはこのうち3人、河上由佳さん、諏訪いつみさん(前説もした)、みずさん。
 客演のうち、横田江美さんはA級MissingLinkのこの前のお芝居でぼく的にはなじみ(いつも眠たがる看護婦いや看護師といういささか三枚目風の役どころで客演ならでは:原節子が小津映画ではなく成瀬巳喜男映画に出たときにずいぶん印象が違うというのと少し似ているかな)。

 午前11時公演というのに出かけるのが趣味になっているのかも知れない。今朝など、かなり寒いが早起きアラカン(55歳だが)にはぴったりの時間帯。これで、アイホールの燐光群や関西芸術座に続いて、最近での朝公演(amマチネ、あるいは、マチネならぬ、マタン公演とでもいってもいいかな?)に興味あり。そして、若者の劇団でどれぐらい入るのかも興味があった(実際なかなかいい感じで客席が埋まり、やはり20〜30歳代中心。すこし遅れる人もいたが)。

 ぼくの大好きなお葬式シーンがあって、そこがお寺というのもなかなか興味深いはじまり。
 なにせ、ここ應典院は、大蓮寺があるからだけれど、お葬式をしないお寺として、演劇はじめいま生きている人と向かい合う場として再建されたからだ。
 さらに、お坊さんのいない葬式(人前葬送)であり、家族葬であるというのが、まあ個人的にもうれしい限りの題材である。

 ただ、家族といってもかなり独特の家族であって、通り魔日向(諏訪いつみ)に刺された暁(諏訪いつみが二役)と同じ児童養護施設で5年間だけ暮した4人だけのお葬式である。あとで、そこに私立探偵を名乗る濱マリー(西原希蓉美)が来て、その姉(おかあちゃん先生!=川端優紀さん)との関係が浮かび上がるとしても。あとで森の中の児童養護施設の謎が説かれていく(浦沢直樹マンガ「モンスター」を少し連想したな。)

 ぼくはてっきり、この殺された暁の死の謎は謎として、その場に居合わせた4人のいまを丹念に描くのかなあと思ってしまったが(まあ、そうなれば、ジャブサー〔事務局注:劇団ジャブジャブサーキット〕のはせひろいちさんとか静かな演劇風対話劇になってしまうからあとで思えば違うのは当たり前なのだが、それがまあぼくの好みなのも確かなので)、そうではなく、マッドサイエンティストに翻弄されたこどもたちのじぶんって何だろう的な展開(昨夜観た『非実在少女のてるちゃん』つながりに自分の目がなっているかからかもしれないが、マンガやアニメがよく扱うSF的モチーフ)…

 お芝居の特色は、高い天井を生かした垂直的な何もない舞台での朗唱とカラオケシャウト(西原希蓉美さんがマイクで歌う)。一見無意味なぐるぐる踊り。でも、これが後半のハーハーする鼓動と一体化へとつながるのではあるが、ちょっと、近い席にいたので、些かひき気味ながら、こういうのがけっこう大阪の舞台ではあるよなあ、とか思っている。

 あとで、山口さんにブログにアップしてもいいか?というお話があり快諾し、写真を戒田竜治さんと撮ってもらう。戒田さんと話しつつ、今回の作品はずいぶん社会というか、そこまで具体的ではないが、少なくとも、他者への意識をもった構造であったことを確認した。

 すなわち、他者の他者としての自分という反省的自己意識を踏まえつつも、シュールな設定によって、ひとひねりすることで、もうひとつの自分探し、あるいは、新しい自分のための様々な自分殺しとして提示したものだと思った。

 ただ、他者との出会いによって「あみだくじ」のように隣の道に偶然に行ってしまうドラマというような(by 鷲田清一さんがこの前言っていた比ゆ)、開かれた自己の変容というタイプではないことも確かである。

 そういう意味では、異質な他者として社会に開かれるドラマではなく、いまだ身内に収斂する自己意識(それが何人の自分になっているにしても)と仲間=家族関係にからめとられているのでは?と指摘することもできるのかも知れない。

 が、逆に、ある意味、それがまた満月動物園という劇集団の自己完結的耽美世界を起点とする良さであるとともに、ここのような寺院空間における「アジール」(避難所)といての特質にうまく響き合っているという見方も可能だとコモンズ企画のあれこれを教えてもらいつつ考えた。



(小暮宣雄・京都橘大学教授)

※本レポートは承諾を得て、小暮先生のブログ「【こぐれ日乗】∽アーツマネジメントж文化政策 § 京都橘大学◎都市環境デザイン学科」の投稿から、その一部を転載させていただきました。

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