チンプンカンプンもまた楽し【1/13:耕読会in應典院のレポート】

チンプンカンプンもまた楽し

 『システム理論入門―ニコラス・ルーマン講義録【1】』(新泉社)なる本を目にした、あるいは手にした、もっと言えば持っている、という人はどれぐらいいらっしゃるだろうか。おそらく社会学を専攻している学生や研究者ぐらいなのではないでしょうか。
 とにかく、この本は重い。400ページ以上もあるハードカバーだから、物理的に重いのは当たり前です。そして、内容は社会学者のルーマンさんが大学でおこなった講義だけあって、理論的で重いのです。本当に難解で難解で、何回読んでも私にはチンプンカンプンなのです。本の帯には、「ルーマン本人による徹底的解説」と明記されているにもかかわらず、この解説の解説をしてくれと叫びたくなります。だから、私は昨年4月から開催されているこの耕読会に出席しています。
 あまりにも抽象的なので、みんなで例えをたっぷり使って考えていきます。そうすると、一挙に身近なこととして理解が進みます。今回は、メーカーが想定していない使用方法をした場合が例となりました。地震が来た瞬間、使っていたパソコンで思わず頭を守るという行為を当てはめてみました。このようなちょっとしたヒントは、進行役の山口悦子さんを中心に、参加者の言葉がきっかけとなります。参加者は、興味関心も、日々たずさわっていることも、知識の量も、参加の目的も異なります。だからこそ、一緒に社会学の本を読んで言葉を重ねることからできる発見が多いのです。ひとりでは投げ出してしまうような本でも一緒に読むからこそ、継続して読み進めることができます。
 ところで、「トリビアルな機械(マシン)」と「非トリビアルな機械(マシン)」という言葉が、読み進めたページの中にありました。数年前に「トリビアの泉」というTV番組がありましたが、トリビアルとはとるに足りない、くだらない雑学という意味です。その否定形が非トリビアルなので、とるに足りなくはないという二重否定の意味を持ちます。そしてトリビアルな機械は予想できる結果がでるものであり、非トリビアルな機械からは予測不可能な結果が生まれるものです。私は、耕読会はまさに非トリビアルな機械のひとつだと思います。
 この耕読会は、コモンズフェスタ以外の期間も毎月開催されています。難しい本をみんなで一緒に読むという時間を経験してみませんか。結局本の内容はあまり理解できなかった、そんな結果でもいいと思います。何かの時に、日常生活の中で、ふっと深まる何かがきっとあると思います。

(小野千佐子・株式会社ティプア代表)


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